口を開けると顎が痛い…
顎関節症ってどんな病気？治るの？
顎関節症とは？
「口を開けると痛い」「あごがカクカク鳴る」「スムーズに開かない」――そんな症状はありませんか？
そんな症状は、顎関節症のサインかもしれません。
悪化すると食事や会話に支障をきたすこともあるため注意が必要です。
この記事では、顎関節症の原因から治療法までを専門家がわかりやすく解説します。
顎関節症の基礎知識
顎関節症（がくかんせつしょう）とは、あごの関節（顎関節）や、口を動かす筋肉（咀嚼筋）に生じる機能的な異常のことをいいます。
口を開けたり閉じたりするときに痛みが出たり、「カクッ」「ゴリッ」と音が鳴ったり、口が開けにくくなるなどの症状が現れるのが特徴です。
顎関節は、こめかみの少し前にある左右の関節で、食事や会話のたびに頻繁に動くとても繊細な部分です。
筋肉や関節円板（関節のクッション）がスムーズに働かなくなると、痛みや違和感、動きの制限が起こります。
また、顎関節症は女性に多く、特に20〜40代の方に多く見られる傾向があります。
顎関節症の主な症状
顎関節症の症状は人によってさまざまですが、代表的なものには次のようなものがあります。
顎関節症のセルフチェック
- 口を開けるとあごが痛い（食事・あくびなど）
- あごを動かすと「カクカク」「ゴリゴリ」と音が鳴る
- 口が開けにくい・指が2本分ほどしか開かない
- 噛むと違和感や痛みを感じる
- 頭痛・肩こり・耳の奥の痛みがある
これらは、関節や筋肉の炎症・ズレ・緊張などが原因で起こることがあります。
軽い症状でも放置すると悪化することがあるため、早めの検査と治療が大切です。
顎関節症の原因
顎関節症の原因はひとつではなく、いくつかの要因が重なって起こることが多いとされています。
主な原因を以下にご紹介します。
なぜ顎関節症になるのか？
かみ合わせのズレ
上下の歯のかみ合わせが正しく合っていないと、あごの関節（顎関節）や周囲の筋肉に常にアンバランスな力がかかり、痛みや違和感を引き起こすことがあります。
特に、虫歯治療などで詰め物や被せ物の高さがわずかに合っていない場合でも、顎の動きが制限されたり、片側に負担が集中したりすることがあります。
歯ぎしり・食いしばり
睡眠中の歯ぎしりや、日中の無意識な食いしばりは、顎関節に非常に強い力を加える習慣です。
これらは一晩で自分の体重ほどの圧力がかかるともいわれ、関節や筋肉、歯そのものにダメージを与える可能性があります。
特に、緊張時や集中しているときに無意識であごに力が入る人も多く、こうした状態が続くことで関節の動きが制限されたり、口を開けにくくなったりすることがあります。
ナイトガード（マウスピース）を使用することで、関節や歯への負担を軽減できる場合もあります。
ストレスや姿勢の悪さ
精神的なストレスは、知らず知らずのうちにあごに力を入れる「食いしばり」を誘発します。
また、スマートフォンやパソコンの長時間使用による猫背・前傾姿勢も、顎関節のバランスを崩す大きな要因です。
最近では「ストレス 顎関節症」という言葉が注目されるほど、心身の影響が深く関わっています。
外傷・過去の治療など
交通事故やスポーツ中の転倒などであごを強く打った場合、関節や周囲の筋肉に損傷が生じ、後遺的に顎関節症を引き起こすことがあります。
また、歯科治療中に長時間大きく口を開けていたことで、一時的に関節や筋肉を痛めるケースもあります。
これが慢性的な痛みや開口障害につながることもあります。
過去の治療歴や外傷歴をしっかりと把握し、原因を特定することが、的確な治療やケアのために非常に重要です。
顎関節症を放置するとどうなる？
軽い痛みや違和感のうちは自然におさまることもありますが、原因を取り除かずに放置すると、
◆関節の変形：関節内の軟骨や骨がすり減り、動きに制限が出る
◆開口障害：口がほとんど開かなくなり、食事や会話が困難になる
◆慢性化：痛みや音が長期間続き、日常生活に支障をきたす
といったトラブルにつながることがあります。
また、あごの筋肉の緊張が続くと、頭痛や肩こり、首のこり、耳の痛みなど、全身の不調にも波及することがあります。
これらの症状は「顎関節症が原因」と気づかれにくいため、注意が必要です。
当院の顎関節症の治療法
顎関節症の治療は、あごの関節や筋肉への負担を減らす「保存療法（手術を行わない治療）」が中心です。
症状や原因に合わせて、以下のような方法が行われます。
顎関節症を改善へ導く
4つのアプローチ
◆マウスピース治療（スプリント療法）
顎関節症の代表的な治療法です。
就寝時などに透明なマウスピース（スプリント）を装着し、歯ぎしりや食いしばりによる関節への負担を軽減します。
関節の位置や筋肉の緊張を整える効果があり、「顎関節症 マウスピース」として広く知られています。
◆咬合（こうごう）調整
噛み合わせのズレが顎関節に負担をかけている場合は、歯の高さや形をわずかに調整して、バランスを整える治療を行ないます。
必要に応じて、被せ物や詰め物の修正を行い、上下の歯が自然に噛み合う状態をつくることで、関節や筋肉への負担を軽減します。
◆生活習慣の改善
日常のクセや姿勢も顎関節症の悪化に関係します。
頬づえをやめる、長時間のスマホ・パソコン使用で前傾姿勢にならないよう意識するなど、姿勢の改善が大切です。
また、強い噛みしめを避けるため、リラックスした顎の位置を保つトレーニングも効果的です。
◆理学療法・薬物療法
痛みや顎のこわばりが強い場合、歯科医院では顎関節のストレッチや温熱パックなどの理学療法を行い、症状をやわらげることがあります。
必要に応じて、消炎鎮痛剤や筋肉をほぐす薬を処方し、炎症や痛みの緩和をサポートします。
症状が重い場合は、他の医療機関と連携して治療を進めることもあります。
これらの治療を組み合わせながら、顎関節や筋肉のバランスを整えていくことで、症状の改善を目指します。
重症化する前に、歯科医院で早めに相談することが重要です。
当院の治療ポリシー
当院では、痛みを抑えるだけでなく、再発しにくい根本的な改善を重視しています。
まずは精密な検査によって原因を見極め、一人ひとりの生活習慣やストレスの状態まで考慮したオーダーメイドの治療計画をご提案します。
また、治療後も再発を防ぐためのセルフケアや姿勢指導を行い、「快適に口を開けられる日常」を長く保てるようサポートしています。
日常生活でできる
セルフケア
顎関節症の治療には、歯科医院での治療と同じくらい日常生活でのセルフケアが大切です。毎日の小さな意識の積み重ねが、症状の改善や再発予防につながります。
小さな意識であごの負担を
軽くしよう
生活習慣の見直し
頬づえをつく、片側でばかり噛む、長時間スマートフォンを見るといったクセは、知らないうちに顎関節へ負担をかけています。
正しい姿勢を意識し、上下の歯を軽く離した「リラックスしたあごの位置（安静位）」を保つことが大切です。
睡眠中の食いしばりがある方は、歯科でマウスピースを使用するのも効果的です。
日常の小さな意識が、症状の改善につながります。
あごのストレッチとセルフケア
あご周りの筋肉をほぐすことで、痛みやこわばりを和らげることができます。
口をゆっくりと「指2本分」ほど開けて閉じる動作を数回繰り返すだけでも、関節の動きがスムーズになります。
また、温かいタオルで頬やこめかみを温めるのもおすすめです。
血流が良くなり、筋肉の緊張が和らぎます。
無理のない範囲で、毎日のケアを続けてみましょう。
食事とストレスケア
食事では、硬い食べ物や大きく口を開ける必要のある料理を控え、やわらかい食材を中心にしましょう。
左右均等に噛むことを意識すると、あごのバランスが整いやすくなります。
また、ストレスは食いしばりや歯ぎしりを引き起こす原因のひとつ。
深呼吸や軽い運動、入浴などでリラックスする時間を持つことも大切です。心身を整えることが、顎関節への負担軽減にもつながります。
顎関節症の治療の流れ
まずは、症状の内容や発症のきっかけ、生活習慣、ストレスの有無などを詳しくお伺いします。
また、顎の動きや痛みの部位・程度を丁寧に確認し、原因を探るための手がかりを見つけていきます。
必要に応じて、レントゲンやCT撮影を行い、関節の形態や動きを確認します。
かみ合わせの状態や筋肉の緊張具合も併せて診査し、顎関節症かどうか、またその程度を正確に診断します。
診断結果をもとに、患者さま一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせた治療計画を立てます。
マウスピース（スプリント療法）を中心に、生活習慣の改善・理学療法・薬物療法など、無理のない保存療法を組み合わせて行います。
マウスピースの装着をはじめ、顎の筋肉をやわらげるストレッチや正しい姿勢・生活習慣の指導を行います。
必要に応じて薬物療法や理学療法を取り入れ、痛みの軽減と関節・筋肉の回復を目指します。
定期的にご来院いただき、症状の改善状況を確認しながらマウスピースの微調整を行います。
生活習慣やかみ合わせのアドバイスも継続的に行い、再発防止をサポートします。
症状が落ち着いた後も、日常生活で行えるセルフケアを継続していただくことで、再発を予防します。
必要に応じて定期検診を受けていただき、顎関節の健康を長く維持できるようサポートいたします。
よくあるご質問
- 顎関節症は自然に治りますか？軽い症状であれば、自然に落ち着くこともあります。
しかし、多くの場合は咬み合わせや筋肉のバランスの問題が関わっているため、放置すると慢性化や悪化の可能性があります。
痛みや口の開けにくさがある場合は、早めに歯科医院で原因を確認することが安心です。 - 歯医者と整形外科、どちらに行けばいい？顎関節症の多くは歯科での診察が適しています。
歯や咬み合わせの状態を確認できるため、原因に沿ったマウスピース治療や生活習慣の指導が受けられます。
ただし、外傷や骨の異常が疑われる場合は、整形外科と連携することもあります。 - 手術が必要になることはありますか？ほとんどの顎関節症は、マウスピース治療や生活習慣の改善、理学療法などの保存療法で改善します。
手術は症状が重度で、関節の変形や開口障害が強い場合に限られます。多くの方は手術に至らず、日常生活に支障のない状態まで回復可能です。
