歯ぐきが腫れて血が出る…
これって歯周病?
放置して大丈夫?

歯ぐきの腫れや
出血の原因とは?

「歯ぐきが腫れて血が出る」──そんな症状を経験したことはありませんか?
一見すると一時的なトラブルに思えるかもしれませんが、実は歯ぐきの炎症や歯周病のサインである可能性があります。
歯周病は初期のうちは痛みが少なく、自覚症状も軽いため放置されやすい病気です。
進行すると歯を支える骨(歯槽骨)が溶け、歯がぐらついたり抜けてしまうこともあります。

ここでは、歯ぐきの腫れや出血を引き起こす代表的な原因を3つの視点から見ていきましょう。

歯ぐきトラブルの主な原因3つ

プラークやかみ合わせなど
「お口の中の環境」によるもの

歯と歯ぐきの境目に歯垢(プラーク)がたまると、細菌が炎症を起こして歯ぐきが赤く腫れ、出血を伴うことがあります。
これは「歯肉炎」と呼ばれる歯周病の初期段階で、適切なケアを行わないと徐々に進行していきます。

また、詰め物や被せ物が歯ぐきに合っていない場合も注意が必要です。
隙間にプラークが残りやすく、慢性的な刺激が歯ぐきの炎症を悪化させます。

みがき方など
「日常の習慣」によるもの

毎日の歯みがきは大切ですが、力を入れすぎると逆効果になることがあります。
強いブラッシングや硬めの歯ブラシは歯ぐきを傷つけ、出血や腫れの原因になります。
また、磨き残しが多いとプラークが蓄積し、炎症を悪化させる要因にもなります。

体調やホルモンバランスなど
「全身の状態」によるもの

歯ぐきの健康は、全身の状態とも深く関わっています。
妊娠中思春期更年期などはホルモンの変化により歯ぐきが敏感になり、炎症を起こしやすくなります。
また、睡眠不足ストレス喫煙などによって免疫力が低下すると、細菌への抵抗力が弱まり、歯ぐきの炎症を悪化させてしまいます。

歯ぐきの腫れや出血を繰り返すときは、口の中だけでなく体調の変化にも目を向けることが大切です。

歯周病の進行段階と症状

歯周病は進行の段階によって症状や治療内容が異なります。
初期のうちは痛みが少ないため気づきにくいですが、放置すると歯を支える骨が溶けてしまうこともあります。

まずは、以下のような変化に注意しましょう。

症状でわかる歯周病のサイン

歯肉炎(しにくえん)

歯ぐきに炎症が起こり、赤く腫れたり、歯みがきのときに血が出たりする初期の状態です。
この段階では、歯を支える骨へのダメージはまだありません。
毎日の丁寧なブラッシングや、歯科医院でのクリーニングを行うことで、健康な状態に戻すことができます。

軽度歯周炎

炎症が進行し、歯ぐきの腫れや出血、口臭が目立つようになります。
歯と歯ぐきの間(歯周ポケット)に歯石がたまり、細菌が繁殖しやすい状態です。
この段階では、スケーリング(歯石除去)などの専門的なクリーニングで改善が期待できます。

中等度歯周炎

歯を支える骨が少しずつ溶けはじめ、歯ぐきの腫れや出血、膿、口臭が強くなります。
歯が浮いたように感じたり、ぐらついたりすることもあります。
歯ぐきの奥深くまで入り込んだ歯石を取り除く「SRP(スケーリング・ルートプレーニング)」などの治療で、炎症の進行を抑えます。

重度歯周炎

歯を支える骨が大きく失われ、歯の動揺や噛むときの痛みが強くなります。
膿や出血が続くことも多く、放置すると歯を失う危険があります。
この段階では、歯ぐきを開いて歯の根を清掃する外科的治療や、失われた組織の再生を促す「再生療法」などを行い、できる限り歯を守ります。

歯周病を放置すると
どうなる?

歯ぐきの腫れや出血を放置すると、歯周病はゆっくり進行します。
初期の軽い炎症でも、放っておくと次のような深刻な症状を招くことがあります。

歯周病が引き起こす
全身への悪影響

◆歯を支える骨が溶けてしまう

歯周病が進むと、歯を支えている「歯槽骨(しそうこつ)」が溶けてしまいます。
骨が減ると歯がぐらつき、最終的には自然に抜けてしまうこともあります。

 

◆口臭や膿が悪化する

歯周ポケット内で細菌が繁殖し、膿がたまることで強い口臭を引き起こします。
自分では気づきにくく、周囲に不快感を与えることもあります。

 

◆最終的に歯が抜け落ちることも

進行した歯周病では、歯ぐきが下がって歯が長く見えたり、噛むと痛みを感じたりします。
治療をしないまま放置すると、歯を失う結果につながります。

 

◆全身の健康にも影響

歯周病菌が血流に乗って全身を巡ることで、糖尿病心疾患誤嚥性肺炎などのリスクが高まることが知られています。
口の中の炎症を防ぐことは、全身の健康を守ることにもつながります。

当院での治療方法

歯ぐきの腫れや出血が続く場合は、自己ケアだけで改善するのは難しく、歯科医院での専門的な治療が必要です。
症状の程度に応じて、次のような処置が行われます。

歯石を除去し、
再発しにくい環境へ

 

◆スケーリング・ルートプレーニング

歯の表面や歯ぐきの中に付着した歯石・プラークを取り除く治療です。
スケーリングで歯石を除去し、ルートプレーニングで歯根の表面を滑らかにすることで、細菌が再び付着しにくい環境を整えます。

 

◆歯周ポケットの洗浄

歯と歯ぐきの間(歯周ポケット)にたまった汚れや膿を除去します。
専用の器具で丁寧に洗浄することで、炎症を抑え、歯ぐきの回復を促します。

 

◆重度の場合の外科的治療

中等度〜重度の歯周病では、溶けてしまった骨や組織を再生させるために、外科的処置(フラップ手術・再生療法など)が行われることもあります。
進行を止めるだけでなく、歯を残すための大切な治療です。

 

◆定期的なメンテナンスの重要性

治療後も、歯周病の再発を防ぐには定期的なメンテナンスが欠かせません。
数か月に一度のプロケアで、歯石の再付着を防ぎ、健康な歯ぐきを維持しましょう。

当院の治療ポリシー

当院では、「歯をできるだけ残す」ことを第一に考えた歯周病治療を行っています。
痛みや不安をできる限り抑え、患者さま一人ひとりの症状や生活習慣に合わせた最適なプランをご提案します。
また、治療後のメンテナンスやセルフケアのサポートにも力を入れ、再発を防ぎ、長く健康な口腔環境を保つことを目指しています。

治療の流れ

01 初診・カウンセリング

まずは歯ぐきの腫れや出血の状況を確認し、生活習慣やお口のケア方法などを詳しくお伺いします。

02 検査・診断

歯周ポケットの深さの測定やレントゲン撮影を行い、歯を支える骨の状態をチェックします。
その結果をもとに、現在の進行度と治療方針を丁寧にご説明します。

03 クリーニング・歯石除去

歯の表面や歯ぐきの境目をクリーニングし、歯石を取り除きます。
軽度の場合はこの段階で症状が改善することもあります。

04 歯周治療(スケーリング・ルートプレーニング)

歯ぐきの中に入り込んだ歯石や汚れを除去し、炎症を鎮めます。
治療中は麻酔を使用するため、痛みを抑えて進めることができます。

05 再評価・メンテナンス

治療後の歯ぐきの状態を再チェックし、改善状況を確認します。
その後は定期的なメンテナンスで再発を防ぎ、健康な口腔環境を維持していきます。

よくあるご質問

  • 歯ぐきの出血は自然に治りますか?
    一時的に治まることはあっても、原因となる歯周病が残っていると再発することがあります。
    「少し血が出るだけだから…」と様子を見ずに、早めに歯科医院でご相談いただくのがおすすめです。
  • 痛みがない場合も歯周病の可能性はありますか?
    あります。
    歯周病は「静かに進行する病気」といわれ、初期のうちは痛みを感じにくいのが特徴です。
    気づかないうちに進んでしまうこともあるため、定期的な検診が大切です。
  • 歯ぐきが腫れたとき、市販の薬で治しても大丈夫ですか?
    市販薬で一時的に炎症が落ち着くことはありますが、根本的な改善にはつながりません。
    歯ぐきの腫れは、歯石や細菌が原因になっている場合が多いため、歯科医院での専門的なクリーニングが必要です。
著者画像

著者:松野 大地

【経 歴】
平成12年 国立岡山大学 歯学部 卒業
平成12年 医療法人 湯川歯科医院 勤務
平成15年 医療法人 幸加会 スギモト歯科医院 勤務
平成17年 江口矯正歯科クリニック 非常勤 勤務
平成24年 松野歯科クリニック 開業

 

【所 属】

日本顎咬合学会 認定医
日本歯科医師会 会員
日本口腔インプラント学会 会員
日本歯周病学会 会員
JPIスタディグループ メンバー
関西インビザラインスタディクラブ メンバー

 

【受講経歴】
H17 Dr miyauchi Esthetic Prosthodontic Preparation course
H18 3i Implant basic course
H18 Japan Prosthetic Institute 咬合診断コース
H20 日本顎咬合学会 一般口演 「咬合高径の設定基準」
H21 日本顎咬合学会 認定医 取得
H23 Alphatite Implant basic course
H24 Osseo Skarp Institute advanced traninng course