冷たいものを食べると歯がしみるのはむし歯?それとも知覚過敏?

しみる原因は大きく2つ!
「むし歯」と「知覚過敏」

冷たいものを口にしたときに「歯がしみる」と感じる原因は、大きく分けてむし歯知覚過敏の2つがあります。
どちらも似たような症状が出るため、自己判断が難しいのが特徴です。
しかし、原因や治療法はまったく異なります。ここでは、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

むし歯によるしみ方の特徴

むし歯は、歯の表面(エナメル質)が細菌の出す酸によって溶かされ、内部の象牙質や神経に刺激が伝わることで痛みが生じます。
初期の段階では冷たいものがしみる程度ですが、進行すると温かいものでも痛みを感じるようになります。

また、以下のような特徴が見られます。

 

・痛みが持続する
・夜間にズキズキと痛むことがある
・痛む場所がはっきりしており、見た目にも黒ずみや穴がある場合が多い

 

むし歯は自然に治ることはありません。
放置すると神経まで感染が進み、根管治療や抜歯が必要になることもあるため、早めの治療が大切です。

むし歯の進行度

C1:エナメル質の虫歯

◆状態歯の一番外側のエナメル質まで達した初期の虫歯です。


◆特徴:痛みはほとんどなく、冷たいものが少ししみる程度で、日常生活に大きな支障はありません。

C2:象牙質の虫歯

◆状態エナメル質の内側にある象牙質まで進行した状態です。


◆特徴:冷たいものや甘いものを口にするとしみることがあり、痛みを感じやすくなります。

C3:神経までの虫歯

◆状態象牙質の奥にある神経や血管まで進行した段階です。


◆特徴:冷たいもの・温かいものの両方で痛みを感じることが多く、夜間にズキズキと痛むこともあります。

C4:歯根まで進行した虫歯

◆状態歯の大部分が崩れて歯根だけが残った状態です。


◆特徴:一時的に痛みがなくなることがありますが、根の先で炎症が起きて再び強い痛みが出る場合があります。

むし歯は自然に治ることはありません。
早めに歯科で診てもらうことで、治療を最小限に抑えられ、歯を長持ちさせることができます。

知覚過敏によるしみ方の特徴

一方、知覚過敏は、歯の構造そのものが壊れているわけではありません。
歯ぐきが下がったり、歯の表面を覆うエナメル質がすり減ったりすることで、象牙質が露出して刺激が神経に伝わりやすくなっている状態です。

知覚過敏の症状には、次のような特徴があります。

 

・冷たいものや歯みがきで「キーン」としみるが、すぐ治まる
・痛みが一時的で、長時間続かない

 

主な原因は、以下のような生活習慣によるものです。

 

・強いブラッシングや硬い歯ブラシの使用
・歯ぐきの下がり(加齢や歯周病による)
・歯ぎしり・食いしばりによる歯の摩耗
・酸性飲料の過剰摂取によるエナメル質の溶解

 

知覚過敏は軽度でも慢性化することがあるため、早めのケアが重要です。

むし歯と知覚過敏の違いを
やさしく解説

「しみる=むし歯」と思われがちですが、痛みの出方やタイミングをよく観察すると、ある程度の違いが見えてきます。
ただし、見た目や感覚だけで正確に判断するのは難しいため、自己判断は禁物です。
歯科医院での診断を受けることが確実な方法です。

見分けるポイント

◆痛みの持続時間
・むし歯:冷たいもの・温かいものを口にしたあとも痛みが続く
・知覚過敏:刺激があると一瞬キーンとしみるが、すぐに治まる

 

◆ 痛むタイミング
・むし歯:何もしていないときでも痛むことがあり、夜間にズキズキすることも
・知覚過敏:歯磨きや冷たいものなど、一時的な刺激でのみ痛む

 

◆ 見た目の違い
・むし歯:黒ずみや小さな穴、欠けなどが見えることが多い
・知覚過敏:歯自体は健康そうに見えるが、歯ぐきが下がっていることがある

歯がしみるときの治療法

歯がしみる原因が「むし歯」なのか「知覚過敏」なのかによって、治療の内容は大きく変わります。
どちらも見た目が似ていることがありますが、原因を正しく見極めて、根本的に治すことが大切です。
ここでは、それぞれの治療方法をわかりやすくご紹介します。

むし歯の場合

むし歯が原因で歯がしみている場合は、むし歯菌により溶かされた部分を取り除き、詰め物や被せ物で修復します。
むし歯の進行具合によって治療内容が異なります。

 

◆初期のむし歯(C1程度)

歯の表面が少し溶けている段階では、削らずにフッ素を塗って再石灰化を促すことがあります。

 

◆中程度のむし歯(C2程度)

冷たいものがしみる・痛みがある場合は、むし歯の部分を削り、白いレジン(樹脂)や金属・セラミックで詰める処置を行います。

 

◆進行したむし歯(C3〜C4程度)

神経まで炎症が及んでいる場合は、根管治療(神経の治療)が必要です。
その後、被せ物(クラウン)で歯の形を整えます。

むし歯は自然に治ることはありません。
早い段階で治療を行えば、削る範囲を最小限に抑えることができます。

知覚過敏の場合

知覚過敏は、歯そのものが壊れているわけではなく、歯の表面のエナメル質がすり減ったり、歯ぐきが下がって象牙質が露出している状態です。
そのため、歯の神経を守るための保護処置が中心になります。

主な治療法は次のとおりです。

 

◆知覚過敏抑制剤の塗布

歯の表面に薬剤を塗って、外からの刺激を感じにくくします。

 

◆コーティング材の塗布
露出した象牙質を覆うことで、刺激をブロックします。

 

◆フッ素塗布
歯を強化してしみる症状を抑える効果があります。

 

◆歯ぎしり・食いしばりの対策
マウスピース(ナイトガード)を装着して歯への負担を軽減します。

自宅でできるしみる歯のケア・予防法

歯がしみる原因の多くは、毎日の生活習慣やお口のケア方法と深く関係しています。
正しいケアを意識することで、むし歯や知覚過敏の予防につながります。
ここでは、自宅でできる対策をいくつかご紹介します。

歯の健康を守る!毎日のケアから始めよう

やさしいブラッシングを心がける

強い力でゴシゴシと磨くと、エナメル質が削れたり、歯ぐきが下がって知覚過敏を引き起こすことがあります。
歯ブラシは「やわらかめ」を選び、小刻みに軽い力で磨くことがポイントです。
特に歯ぐきとの境目は力を入れすぎず、丁寧に磨くようにしましょう。

知覚過敏用の歯磨き粉を使う

市販されている「知覚過敏ケア専用」の歯磨き粉には、歯の神経への刺激を抑える成分(硝酸カリウムなど)が配合されています。
毎日継続して使うことで、徐々にしみる症状を和らげる効果が期待できます。

また、フッ素配合の歯磨き粉を使用することで、歯の表面を強化し、むし歯予防にもつながります。

歯ぎしり・食いしばりの対策をする

歯ぎしりや食いしばりは、歯の表面に細かなヒビを入れ、知覚過敏を悪化させる原因になります。
就寝中に歯ぎしりをしている方は、歯科医院でマウスピース(ナイトガード)を作るのがおすすめです。
歯への負担を軽減し、症状の進行を防ぐことができます。

定期的な歯科検診を受ける

自宅でのケアだけでは防ぎきれない初期のむし歯や、歯ぐきの下がりもあります。
定期的に歯科検診を受けることで、早期発見・早期治療ができ、しみる原因を未然に防げます。
また、正しいブラッシング方法歯磨き粉の選び方もアドバイスしてもらえます。

よくあるご質問

  • どのタイミングで歯科に行けばよいですか?
    冷たいものを食べたときに一瞬しみる程度でも、症状が続いたり、痛みがだんだん強くなった場合は、早めに歯科で診てもらうことをおすすめします。
    早めの受診は、むし歯や知覚過敏の進行を防ぎ、痛みの悪化を防ぐことにつながります。
  • フッ素やコーティングの効果はどのくらいありますか?
    個人差はありますが、フッ素やコーティング材は、知覚過敏による痛みをやわらげる効果があります。
    さらに、歯の表面を強化することで再発予防にも役立ちます。
    より効果を高めるためには、歯科で定期的に塗布してもらうことが望ましいです。
  • 子どもも知覚過敏になりますか?
    はい、子どもでも知覚過敏になることがあります。
    特に、歯ぐきが少し下がっていたり、歯磨きの力が強すぎる場合に起こりやすいです。
    気になる症状がある場合は、無理せず歯科で相談することをおすすめします。
著者画像

著者:松野 大地

【経 歴】
平成12年 国立岡山大学 歯学部 卒業
平成12年 医療法人 湯川歯科医院 勤務
平成15年 医療法人 幸加会 スギモト歯科医院 勤務
平成17年 江口矯正歯科クリニック 非常勤 勤務
平成24年 松野歯科クリニック 開業

 

【所 属】

日本顎咬合学会 認定医
日本歯科医師会 会員
日本口腔インプラント学会 会員
日本歯周病学会 会員
JPIスタディグループ メンバー
関西インビザラインスタディクラブ メンバー

 

【受講経歴】
H17 Dr miyauchi Esthetic Prosthodontic Preparation course
H18 3i Implant basic course
H18 Japan Prosthetic Institute 咬合診断コース
H20 日本顎咬合学会 一般口演 「咬合高径の設定基準」
H21 日本顎咬合学会 認定医 取得
H23 Alphatite Implant basic course
H24 Osseo Skarp Institute advanced traninng course